「エスペラント 文法の散歩道」
著者:小西 岳
発行:JEI
初版:1986年6月15日 改版:2009年10月10日
初版へのまえがき
この本の内容は1983年1月から1986年3月まで、「文法の散歩道」というシリーズとしてLa Movado誌に連載したものです。
「散歩道」という名前の示す通り、筆者が思いつくままにテーマをとり上げて論じる、言わば「文法雑談」が当初の意図でした。連載が進むうちに学習的な色彩がだんだん強くなってきましたが、決して系統的な文法講座ではありません。随筆的な要素も強いため、筆者独自の意見や、やや冒険的な語法の提案があったりします。また、「関西弁とエスペラント」などという、本筋から離れたおしゃべりも中に混じっています。単行本として出版するに当って、そういった部分を整理してしまおうか、とも考えましたが、むしろいろいろな要素を含んでいた方が読み物としてはおもしろいか、とも思い、敢えて手を加えませんでした。
連載中は編集部の宮本正男さんをはじめ、愛読してくださった読者のかたがたからも随分と励ましを受けました。この本が世に出ることができたのは、そのおかげです。この場を借りて厚くお礼申し上げます。
日本のエスペラント運動には、残念ながら、まだ系統的な文法学習書がありません。いずれそういうものを執筆してみたい、という希望だけは筆者も持っているのですが、それが実現するまでの間、この「散歩道」が僅かでも文法学習の手引きとして役立てば幸いです。
1986年5月13日 小西 岳
改訂新版へのまえがき
初版の出版されたのはもう20年以上も前のことです。初版のまえがきでは「日本のエスペラント運動には、残念ながら、まだ系統的な文法学習書がありません」と書きましたが、今では藤巻謙一さんの『まるごとエスペラント文法』(2001年、日本エスペラント学会)という好著があります。また、この間、新版Plena Ilustrita Vortaro(2005年、Sennacieca Asocio tutmonda)や『エスペラント日本語辞典』(2006年、日本エスペラント学会)といった辞書類の出版もあり、エスペラントの学習環境は大きく改善されました。が、本書で取り上げた事項の多くは、現在でもなお、中級の学習者のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容を含んでいると思います。
今回の改訂に当たっては、主として時代の変化のなかで古くなってしまった記述を修正することに留意しました。ただ、異色の章である「7. 関西弁とエスペラント」に出てくる、当時の時代背景を反映した事柄については、読み物としての面白さを保つために、そのままにしました。
なお、最後の章「23. 相対時と絶対時」で述べている使い分けの基準は本書で初めて提示したもので、その後、『エスペラント日本語辞典』の付録にとりいれられたことを付記しておきます。
2009年4月9日 小西 岳