小林 司/萩原 洋子: 4時間で覚える地球語エスペラント

4時間で覚える地球語エスペラント

著者:小林 司/萩原 洋子

発行:白水社

初版:2006年7月30日  改版:2008年11月10日

 

はじめに

 エスペラントは1887年にザメンホフによって創案された人造語です。文法が16か条しかなく、現在世界中で実用されている唯一中立の地球語(=国際語)です。大変覚えやすいので、「戦争と平和」を書いた文豪トルストイも「2時間たらずでエスペラントをすらすらと理解できるようになった」と述べて、普及を支援したほどです。

 この天才と同じ時間で私たちがエスペラントをマスターするのは無理だとしても、英語を知っている人ならば、せめて倍の4時間くらいでエスペラントを習得できないものでしょうか。適切な独習書か指導者があれば、それは可能だと思います。

 そういう目的に役立つ独習書を目指して、私どもはこの本を書きました。エスペラントの独習書は今までにも何種類も出版されてきましたが、習得に何週間もかかるカリキュラムが組まれているために学習者が途中で飽きてしまい、学習をやめてしまうきらいがありました。英語の知識を利用することによって習得時間を大幅に短縮したのがこの本の特徴です。

 日本では中学で全員が英語を学んでますから、英語と比較しながらエスペラントを勉強すれば理解しやすい点が多いのです。例えば、estasは「~である」と教えるよりも、「英語のbeと同じだ」と説明する方がよくわかるはずです。単語を覚えるにも、英語と似ている形のものが74%もあるので、fingro(エスペラントの「指」)を英語のfingerと並べておけば覚えやすいに違いありません。「英語をやめてエスペラントを学ぼう」ではなしに「英語を利用して、エスペラントを学ぼう」というわけです。

 大学でドイツ語やフランス語を第2外国語として学ぶ人も少なくないでしょうから、これらの外国語からの連想を使ってエスペラントを楽に習得するとか、逆に、エスペラントを知っていれば、他の外国語をマスターしやすくなるといった利点も利用すべきです。

 エスペラントを学んでもエスペラント国というものはありませんから、実際にエスペラントを使って他人と交流できるのはエスペランティストの大会や講習会に出席した時とか、外国のエスペランティストと会う時です。そんな際に使えそうな会話を覚えることも大切です。この本では例文に工夫が凝らしてありますので、第II章を覚えれば、一応、読んだり、書いたり、話したりするのに必要な力は十分につくように編集してあります。

 本書の目標は、名文ではないにせよ、思うことを自由に手紙や日記に書けて、専門文献や論文以外のふつうの小説や新聞ならすらすら読める、エスペラントの大会に出席した時に会話に困らない、そんなレベルの実力を数時間の学習で獲得することです。

 中学校の英語の授業のような学び方を真正面からの正攻法とすれば、この本の作戦はいわばゲリラ戦法です。中学校で3年間英語を学ぶと、単語をおよそ950~1100語覚え、やさしい欄ならば英文の新聞を読める程度の語学力がつくはずです。それと同程度のエスペラントの語学力をわずか4時間でつけてしまおうというのです。指示通りに勉強すれば、短時間で必ずマスターできます。日本語の本を読むのと同じように、エスペラントの本をすらすらと理解できる快感をぜひ味わってください。これを一度でも体験すると病みつきになって、その醍醐味を忘れられなくなるものです。

 しかし、エスペラントも一つの言語ですから、立派な文を書いたり話したりするのには、ある程度の努力が要ることは、他の民族語とまったく同じです。日本語を例にとれば、「彼女は彼女の頭の上に帽子を置いた」ではなしに「彼女は帽子をかぶった」と、正しい表現を使えるようにしたいものです。それには、模範文を多く読むしかありません。私たちは日本語を一人前に使えるようになるまでに、小学校以来どれほど多くの国語教科書や新聞や雑誌を読んだり、ラジオやテレビを聞いたりしたかを思い起こしてください。

 この本には、名文の例として世界の文学作品5点の書き始めの部分を転載しました。著作権や難易度の関係で北欧が多くなりましたが、日本語訳と各原作の民族語とを添えておきましたので、訳し方の勉強の他にいろいろと役立つでしょう。それぞれの民族語を見てもさっぱり意味が判らないのに、それが一旦エスペラントに訳されると、さっと意味が判る快感はまた格別だと思います。ここには5種類の外国語しか採録してありませんが、全世界には8000もの民族語があるといわれています。そのすべてをマスターすることなどとうてい不可能ですから、国際語がどうしても必要なのです。国際語は邦訳のない小国の文学作品を読むのにも役立ちます。

 せっかく学習を始めても、間もなくやめてしまう人がいるのは、エスペラントが他の外国語とは違う独特の存在意義を持っていることが十分に理解されていないからだろうと思います。それで、文法以外に、歴史その他の面の記述にもかなりの力を注ぎました。

 この本によって、多くの人が短時間で楽にエスペラントをものにされるように願っています。感想をお教え下さい。

 なお、執筆に際し、石野良夫、北川久、Wilhelm Schmid、東海林敬子、中島みほ子、真壁禄郎、山川修一さんに資料提供と助言をいただき、海外の多くのエスペランティストたち、特にフランスのM. J. Liné夫人、オランダのMoerbeek夫妻、スウェーデンのK. Rohdin夫人、デンマークのU. Lohse氏、ギリシャのY. Azgytopoulou嬢に助けていただき、カナダのKlivo Lendon氏には、英語の校閲をお願いしました。

 このたび、1995年の刊行以来、読者のご支持をいただいてきた本書のCDブック化にあたって、コラムを一新し、各種HPの紹介を初め、インターネット関連の情報をふんだんに盛り込みました。

    2006年6月1日  小林 司・萩原 洋子

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