◆動詞の相と分詞接尾辞
動詞が瞬間的な動作や変化を表わすものか、持続的な動作や状態を表わすものかによって、分詞接尾辞の結び付きに制限があります。
次のような状態を表わす動詞に、完了を表わす分詞接尾辞「-int-」・「-it-」を付けると、
意味が成り立たなかったり、使う場面が大変限られた表現になります。
×amito, amita, amite ← ami(~を愛している/~を好んでいる)
△havinto, havinta, havinte ← havi(~を持っている/~がある)
■開始を表わす接頭辞「ek-」の付いた次のような合成語なら「-int-」・「-it-」を付けても意味が成り立ちます。
○ekamito, ekamita, ekamite 惚れられた人/惚れられた/惚れられて
○ekhavinto, ekhavinta, ekhavinte 入手した人/入手した/入手して
◆次のような瞬間的な動作や変化を表わす動詞に、進行を表わす分詞接尾辞「-ant-」・「-at-」をつなぐのは不自然です。
動作の継続「~しつつある」や反復「繰り返し~している」を表わせますが、実際に用いる場面は少ないでしょう。
△decidanta 決めつつある~ △decidata 決められつつある~
△fermanta 閉めつつある~ △fermata 閉められつつある~
△finanta 終えつつある~ △finata 終えられつつある~
△perdanta 失いつつある~ △perdata 失われつつある~
* Nun en la tuta mondo arbaro estas perdata. 今や世界中で森林が失われつつある。
◆自動詞と受け身の分詞接尾辞
自動詞語根に、受け身の分詞語尾「-at-」・「-it-」・「-ot-」が付くことはありません。
×mortita ← morti 死ぬ
×starita ← stari 立っている
×sidita ← sidi 座っている
×ĝojata ← ĝoji 喜ぶ
■但し、次のようなものは用いられることがあります。
△itora vojo 進むべき道 (= surirota vojo)
△loĝata domo 住人のいる家屋 (= enloĝata domo)
引用:藤巻 謙一 著『まるごとエスペラント文法』JEI 刊