Kenji Ossaka: Esperanto Kompleta Kurso por Japanoj

エスペラント捷径

著者小坂狷二

発行:JEI

初版19271210(1973815改訂7版発行

 

    はしがき

社会は人類のあらゆる知識を終結し、教養の光を弘めるのに適する言語を作り出すであろう…この語は最も偉大な理智の機関となる。私はこれこそ人間の精神の最後の努力であると云うことをはばからない…なんとなれば人間は人の視界を拡げた望遠鏡に劣らぬ理智を発揚するために役立つ道具を手にしたことになるからである…私は確言する、世界共通語にまさる発明は存在しないと…

        ―ライプニッツ

 人類文化の今後の進展には国境超えた諸民族の提携が必要であり、また実際、あらゆる分野において国際的協力がいよいよ盛んになりつつある。しかし、せっかくのこの民族共働もこれを常に阻むものがある。それは言語の相違である。現在、国際会議や交渉には一二強国の言語が使用されるのが常であるが、これでは多数の弱国民は強国語習得のために他の大切な学問の学習を甚だしく犠牲にすることになり、不利益な立場に置かれることになる。日本でも何万と云う人が莫大な金、時間、労力を費やして英語を学んでいるが、その中から英国人と太刀打ちできるほどに熟達する人が何人できるであろうか。しかもこれは日本人の頭のせいではなくて、英語の習得そのものが、日本人にとって不可能と云うべきほどにむつかしいためなのである。

 また人類は二度の世界戦争の惨禍によって目ざめ、世界平和を熱望している。しかし、やはり言語上の事大思想の蒙を啓き、言語上の帝国主義を打破し、各民族をして言語的に完全平等の立場に立たしめない限りは、各民族の善意、共存共栄の上に築かるべき人類の真の、恒久的平和は絶対に招来できない。

 であるから今日、人類にとって、どの民族にも属さない絶対中立の、そしてその構成が合理的であるために学習が極めて容易で、かつその表現が明確、自在、優雅な国際語エスペラント普及活用することが何よりも急務である。エスペラントは各国の開拓者の多年にわたる刻苦努力により、すでに数千の文献を刊行し、全世界に数十万の同志者を獲得し、旅行に、文通に、会議に、交歓にその遺憾なき本領を発揮しつつある唯一の、生きた国際語である。エスペラントの採用によって、上掲ドイツの大哲人ライプニッツが三百年前に予言した人類の理想は実現されたことになる。

 エスペラントの学習は英仏独等の語と比べれば遥かに容易で、その十分の一以下の時間と労力を以って足れりとする。しかし二三週間で熟達し得られると思ったら大きな間違である。一つの生きた人間の言葉がそんな短時間で習得できるはずがない。読書、練習によって後になずまねば手に入れたとは言えない。どうしても半年や一年の努力、辛棒は必要なのである。

 本書は学習者が少なくとも中学卒業程度の外国語の素養があるものとして講述したもので、「捷径」の名の示すごとく大体三四カ月で一とかどのエスペランチストに仕上げることを目標とした(外国語の素養の少い方はもっと詳しい大部の独習書、例えば拙著「小坂エスペラント講座」などに就て学ばれたい)。

 言語学習の秘訣は一にも二にも根気である。一時に2課も3課もやるかと思えば、4日も5日も放っておくようなやり方は大禁物。少しづつでよいから毎日コツコツ続けてやり、前のところ充分覚え込まぬうちは次に進まぬよう。鈍根のねばりがなければ独習は決して大成しない。また単語はくり返し掲げないないから、単語カードでも作って端から覚えてゆくようにされたい。

 本書修了の上は国際文通によって実地活用を試みることをおすすめする。また雑誌や書物を取り寄せて、絶えず読書されること。さらに進んで知友に学習をすすめて研究会を作ったり、講習会を開いて人に教えるのも大に御自分の勉強になることである。

    19576月改定版出版に当たりて

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