Rihej Nomura: “Vortareto kun ekzemploj”

エスペラント 日常用語活用辞典
著者:野村 理兵衛
発行:ピラート社
初版:1975年11月30日(第2刷 初版:1964年6月?)

まえがき

もし知らない単語の意味を求めてこの辞典を開く方があれば、その単語が見出し語中に無くて失望される場合が多いであろう。この辞典の見出し語は僅かに262語に過ぎないからである。そしてそれらは全部初学者もすでに一応は知っておられるはずの単語ばかりである。しかし一応意味を知っていることと、本当の意味をつかみ、その正しい用法を知ってこれを自由に活用できることとは別問題である。例えば Li diris al la direkto de la arbaro kaj baldaŭ atingis al ŝia domo.  という文は正しいエスペラントではなくて、「…の方向へ」「…に着く」という日本語の影響をけた文である。用法について常に疑問を持つことが上達の近道であるが、こうした疑問に答え、自分の知識を確かめてくれるものとしてPlena Vortaroがあるが、一般に敬遠され勝ちであり、日本の学習者に親しみやすい活用辞典の出現が久しく要望されていた。しかし、限られた枚数では多くの見出し語と豊富な説明内容を両立させることは不可能なので、この点編集上を最も苦心したが、ある程度学習した人ならば知っているような用法も取り上げると共に、かなり進んだ人でもはっきり知らないような比較的高度な用法まで取り上げる方針の下に見出し語の数を極度に制限せざるを得なかった。

このように僅かの数ではあるが基本単語についての「読みもの」として一読されるならば、一見単純そうに見えるこれらの単語が案外意味の多様性を持ち、用法の変化と相まって奥深い表現力を持っていることに驚かれることと思う。二千、三千の単語を覚えることよりも、僅かの日常用語の正しい意味を用法を学び、これを自由に使いこなすことがどんなに重要であるかということを認識していただければ、本辞典の目的は充分に達せられたというべきであろう。

訳語は代表訳を示したが、単語の真の意味は多くの用例を通じて理解すべき場合も多いので、代表訳なしで、訳文中に引用符をつけて訳語を示す方法を併用した。

用例は専らZamenhof全著作中より引用したが、単純化するため、または理解し易くするために、固有名詞を代名詞に変え、不必要な形容詞などを省き、場合によっては単語を入れ代える(例:spesmilojをjenojに)などの手を加えた。

用例中例えば、Instruu al mi, kiel ( mi povos ) sukcesi.  はmi povosを省き得ることを、またmontri la pordon [ al la pordo ]はla pordonの代わりにal la pordoを用い得ることを示す。

見出し語中、文法書の詳しい説明に譲るべき語は除外し(例:la)、または見出し語に加えて最小限の説明も試みたが(例:si)、これらの語については説明も用例も徹底し得なかった。

いま稿を終えて自分ながら不満な点も多いが、日本のエスペラント界としては最初の試みであるこの種の辞典の編集という、私の力に過ぎた仕事に着手することに私を踏み切らせたものは、多大の犠牲を払ってこの出版を企画されたPirato社の藤城謙三氏の強い熱意であり、途中幾度かペンを投げようとした私を曲がりなりにも最後までがん張らせてくれたのは同氏及び宮本正男氏の絶えざるご指導と励ましのお蔭であった。いりいろ適切なご教示を得たことなどと併せて、ここに両氏に心からの敬意と感謝の意を表すると共に、この「辞典」というには余りにも語数の少い本書ではあるが、語数の豊富さを誇る新選エス和辞典や和エス辞典の補足的な役割りを幾分なりとも果たしつつ、将来における「活用大辞典」出版への一つの捨て石となるならば幸いです。この意味では利用者各位のご教示を切に願って止まない次第である。

  1964年6月

    野村 理兵衛

Rihej Nomura  1975
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